<油圧サーボコントローラの新しい流れ>
 デジタルサーボコントローラによる油圧サーボシステムの構築
 
油空圧技術2006年7月号
[1] はじめに

 当社で永年取り扱って来た米国ガリルモーションコントロール社(以下ガリル社)製コントローラの紹介と油圧制御システムへの適用例を示す。ガリル社のコントローラはモータ制御用として開発されたが、当社で油圧デジタルサーボシステムへの適用に成功し、海外でも応用される様になって来ている。
[2] コントローラについて

 ここではガリル社の新世代コントローラであるアクセレラシリーズを紹介する。ガリル社のコントローラはその使い勝手の良さとコストパフォーマンスが最大の特徴である。反面これまでのシリーズではサーボ制御自体には満足しても、複雑な処理をアプリケーションプログラムとして実行する場合などに、CPUの処理速度に対し若干不満があった。新しいアクセレラシリーズはRISCベースのCPUを採用し、処理能力を大幅に改善した。概略スペックを下表に示す。

 このコントローラは通信によるコマンドの直接入力または、ダウンロードされたアプリケーションプログラムを実行する事により様々な機能を実現する。アプリケーションプログラムには条件分岐、サブルーチンやマルチタスクなど簡易言語機能が含まれており、コントローラ単体でもかなりの機能が実現可能である。上位パソコン側で上位プログラムを構築する事により更に複雑な機能やMMIも実現可能である。現在アクセレラシリーズはPCIバス通信モデルのみだが、前シリーズ同様にLANやRS-232C通信モデルも順次リリースされ、上位コントローラにはPLC等も使用可能となる予定である。 現在は制御軸数に対してDMC-1816(1軸)〜DMC-1886(8軸)の8種類が用意されている。

 多彩なコマンド群は機能を連想させる2文字で構成されており、通信ソフトウェアツールから直接入力可能である。その為プログラム作業なしにサーボシステムを直ぐに動作させる事ができ、新規システムの開発時やトラブル発生時の解析等、非常に強力なツールとなっている。

 油圧と電動モータ等の混在制御もでき、駆動力やアクチュエータの大きさ、応答性能等でさまざまな機器が選択可能である。
制御軸数:1〜8軸
  複数のコントローラを使用する事により9軸以上の制御も可能。
  多軸補間動作はひとつのコントローラ内でのみ実行可能。
エンコーダ最大入力速度:22MHz
  0.01μm/パルスのエンコーダを使用時でも、0.22m/sec(13.2m/min)の高速動作が可能
最小サンプリングタイム:31.25μsec
  1・2軸: 62.50μsec( 31.25μsec) 3・4軸:125.00μsec( 62.50μsec)
  5・6軸:156.25μsec( 93.75μsec) 7・8軸:187.50μsec(125.00μsec)
   *括弧内の数値は一部機能が制限されるファーストファームウェアをインストールした場合
コマンド実行速度:平均約40μsec
  アプリケーションプログラムの1コマンド当りの平均実行速度
プログラム容量
  プログラム/80文字×2000行 変数/510個
  配列/16,000 要素(配列数はmax 30個) ラベル/510個
   *全てFLASHメモリに保存でき、電源ONからの自動起動が可能。
マルチタスク本数:8本
  マルチタスク/マルチスレッドのプログラムを記述できるので、複数の軸が非同期にイベント待ちをする様なシステムでも、シンプルでデバグし易いプログラムを構築できる。
制御ロジック:拡張PID制御
  制御目標位置とエンコーダ現在位置との偏差に対する、PID制御を基本とし、速度フィードフォワード、加速度フィードフォワード、積分リミット、ノッチフィルター、ローパスフィルターの機能が拡張されている。
動作モード
  PTP位置決モード、ジョグモード(速度指令)、2軸・直線円弧補間モード、1〜8軸・直線補間モード、輪郭線モード、電子ギヤモード、電子カムモード、位置追従モード
[3]拡張PID制御

 コントローラ内のプロファイラが示す制御目標位置とエンコーダからのフィードバック位置との偏差に対するPID制御を基本とし、速度フィードフォワード、加速度フィードフォワード、積分リミット、ノッチフィルター、ローパスフィルターの機能が拡張されている。パラメータは随時変更可能であり、プログラミングにより処理速度が間に合う範囲であれば適応制御も可能となる。ブロックダイアグラムを図1に示す。

図1 拡張PIDブロックダイアグラム
[4]制御モード

<PTP位置決めモード>

 このモードはあらゆる軸の組み合わせが可能である。絶対目標位置(PA)又は、相対移動量(PR)、速度(SP)、加速度(AC)、減速度(DC)を指定でき、各軸独立又は同時に動作開始可能である。停止コマンド(ST)により途中で停止させる事も可能である。動作開始コマンド(BG)で、コントローラーは台形速度プロファイルを生成する。そこでは速度や加速度を動作中いつでも変更する事ができ、急激な動作移行が許されないアプリケーションには、動作スムージング機能(IT)が提供されている。位置(TP)や位置エラー(TE)はいつでも取得可能である。使用例を図2に示す。
<ジョグモード>
 ジョグ速度・方向(JG)、加速度(AC)、減速度(DC)を与え、動作開始コマンド(BG)によりジョグ動作が開始される。これらのパラメータは動作中でも変更可能である。速度が更新されれば、新しい設定値に向かって設定されている加減速度で滑らかに移行する。速度通知コマンド(TV)を利用すれば、いつでも平均速度を得る事ができる。使用例を図3に示す。
<ベクターモード>
 直線(VP)と円弧(CR)で2次元の経路を設定する。511個までのセグメントを動作開始前に与えておく事ができ、動作中に追加セグメントを転送可能であり、極めて長い経路を停止せずにたどる事ができる。ベクター速度(VS)、ベクター加速度(VA)、ベクター減速度(VD)、動作スムージング(VT)を設定でき、ベクター速度と加速度は動作中いつでも変更する事ができる。速度オーバーライド、コーナー減速、指定部分に対する異なる速度の割り当てなどが可能である。動作中に速度オーバーライドを0%にする事で一時停止でき、100%に戻せば動作を再開する。使用例を図4に示す。
<直線補間モード>
 最高8軸において任意の軌跡を線セグメント(LI)として定義する。ベクター速度(VS)、ベクター加速度(VA)、ベクター減速度(VD)、ベクタースムージング(VT)も同様に定義でき、511個までのLIセグメントを動作開始前に与えておく事ができる。動作中にLIセグメントを追加する事が可能であり、軌跡の長さは無制限となる。使用例を図5に示す。
<輪郭線モード>
 一定時間(DT)経過後の位置の増分量(CD)により示された位置対時間の軌跡を直接入力する事で、コントローラープロファイルをバイパスして、任意のプロファイルが設計可能である。コントローラーは設定された点の間の直線補間を行う。このモードは、コンピューターによって生成された経路や教示された位置経路をたどるのに有効である。

<電子ギヤモード>
 マスターエンコーダの入力に対し任意の軸を任意のギヤ比で同期させる事ができる。追従開始時には設定した距離でスムーズに追従開始できる機能もある。

<電子カムモード>
 1サイクルを最大256分割する電子カムを構築可能である。

<位置追従モード>
 このモードでは位置指令(PA)を指定すると動作開始指令(BG)を待たずに、設定されている速度(SP)、加速度(AC)で動作が開始する。動作中に位置指令が変更されると設定されている減速度(DC)で停止した後、自動的に次の目標位置へ向かう事ができる。
[5]油圧デジタルサーボシステムへの適用

 油圧シリンダをガリルコントローラでデジタルサーボ制御する場合の構成例を図6に示す。また写真は、当社がIFPEX2005に出展したデモ用油圧XYテーブルである。
 
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[6]応用事例

 当社には油圧のハイパワーを高精度で制御した次の様な応用例がある。

<各種制御>
押出機、圧延機、スピニングマシン、ホーニングマシン、紛体プレス、ファインブランキングプレス、加圧試験機、等々。

<NC・ロボティクス応用>
XYテーブルや多関節ロボット。

<モーションベース>
アトラクションやシミュレータ用の6軸や3軸のパラレルリンク。

<地震体感装置>
防災センター等に常設のものや車載型、免振機構のテスト用など。
[7]おわりに

 色々なシステムへの適用を行なってきた中で感じている事はメカ剛性の重要性である。高いメカ剛性があればサブミクロンをハイゲインで制御可能である。反面フィードバックセンサの取り付け構造やハイパワーであるが故の機構の歪み等が十分考慮されていないとハンチングの原因となり、ローゲインでの運用を余儀なくされてしまう。サーボ弁を使う上では配管抵抗や背圧の考慮は疎かにできない。リターンの配管を太くするだけでハンチング等が治まる事を幾度か経験した。

 今後の課題として、これまでマイナーループとしてアナログフィードバックアンプを追加する事で実現していた圧力制御をデジタルループに組み込みたいと考えている。

 昨今、大手油器メーカがシステム対応する部門を縮小する傾向にあり、油圧システムの構築が敬遠されがちであるが、ぜひ一度当社にご相談頂きたい。

油空圧技術2006年7月号
 その他レポート

 過去、日本工業出版「油空圧技術」にもガリル・モーションコントローラと油圧制御に関するレポートを掲載しました。
 掲載した情報は次の通りです。

 
 (1) 多軸コントローラ<高機能ですぐに使いこなせる多軸コントローラの油圧適応例> 2010年4月号

 また「油圧制御システムにデジタルサーボコントローラ」という特設サイトもご用意しております。ぜひ、ご覧ください。

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