<高機能ですぐに使いこなせる多軸コントローラの油圧適応例>
 多軸コントローラ
 油空圧技術2010年4月号
[1] はじめに
 当社では、油圧および電動アクチュエータのモーションコントローラとして、長年にわたって米国ガリルモーションコントロール社(以下、ガリル社)のコントローラを取り扱ってきた。もともとヒューレット・パッカード社でプロッターの開発に従事していたヤコブ・タル博士が電動サーボモーター用に創り出した物であるが、当社はその油圧への適応に着目し、多くの適用例のレポートをガリル本社に送ってきた。現在ではメーカーの用途例にも流体事例が含まれるようになっている。
[2] 現在のガリルコントローラ
 ガリル社のモーションコントローラの最大の特徴として、初めて使うユーザーにもすぐに理解できる簡易言語体系を持ち、各種パラメータもデフォルト値がインストールされている事により、とりあえずアクチュエータを動かしてみることができるなど使い勝手の良さとコストパフォーマンスが挙げられる。
 現在提供されているアクセラシリーズは、これまで若干の不満のあったCPUの処理速度がRISCベースのCPUの採用により大幅にUPしている。
アクセラシリーズの代表的な2機種、PCIボードタイプの“DMC-18x6”(写真1)と、イーサネットまたはRS232対応のスタンドアロンタイプボックス入りの“DMC-40x0”(xには1〜8の軸数が入る)(写真2)があり、いずれも複数のコントローラの同期運転が可能であり9軸以上の同時動作を行うことができる。但し、多軸補間動作は同一コントローラ内のみで実行可能である。

写真1 DMC-18x6

写真2 DMC-40x0
 制御面でのパフォーマンスとしては
(1) エンコーダ最大入力速度:22MHz
  1μ分解能にて2.2M/S=132M/Sの高速性。デュアルループのためなどに各軸ごとに2CHずつある。
(2) 最小サンプリングタイム62.5μS
  *1,2軸:62.5μS
  *7,8軸:187.5μS
  オプションファームウエアにて更に高速化。
(3) コマンド実行速度:平均約40μS
  アプリケーションソフトの1コマンドあたりの平均実行速度。
(4)プログラム容量
  *プログラム:80文字*2000行
  *変   数:510個
  *配   列:16000要素
       (配列数は最大30個)
  *ラ ベ ル:510個
  全てフラッシュメモリに格納でき。電源ON時に自動起動可能。
(5)マルチタスク:8本
(6)制御方式:拡張PID制御

 制御ダイアグラムを、図1に示す。

図1 拡張PIDブロックダイアグラム
(7)制御モード
2−1 PTP位置決めモード
 このモードは全軸の組み合わせが出来、絶対目標位置(PA)または相対目標位置(PR)、速度(SP)、加速度(AC)、減速度(DC)を指定して台形速度プロファイルを生成する。各軸同時または個別に動作開始コマンド(BG)により起動する。途中停止は(ST)にて行う。速度、加減速度は動作中でも変更できる。急激な動作変更が許されない場合のためスムージング機能(IT)が用意されている。現在位置(TP)や一エラー(TE)は常時取得できる。
2−2 ジョグモード
 ジョグ速度・方向(JG)、加減速(AC)(DC)を定義してスタート(BG)させる。パラメータは動作中でも変更できる。現行速度を(TV)コマンドで取得できる。

2−3 ベクターモード
 直線(VP)円弧(CR)を用いて2次元の経路線分を設定する。動作開始前に511個与えられ、動作中に追加できる。べクター速度(VS)加減速度(VA)(VD)動作スムージング(VT)を設定できる。

2−4 直線補間モード
 最高8軸にて任意の軌跡を線セグメント(LI)として定義し(VS)(VA)(VD)(VT)を用いて目的の動作を行わせる。線分の扱いは-に同じ。

2−5 輪郭線モード
 一定時間(DT)後の位置の変化分(CD)を用いて位置対時間の軌跡を直接入力することで、外部から与えられる任意のプロファイルが設計できる。

2−6 電子ギヤモード
 マスターエンコーダ入力に対する任意のギヤ比で、任意の軸を同期動作が可能。ある距離地点で同期を成立させることも可能。

2−7 電子カムモード
 1サイクルを最大256分割する電子カムを構築できる。

2−8 位置追従モード
 このモードは位置指令(PA)を与えると(BG)無しに(SP)(AC)により動作を開始する。途中で位置指令が変更されると(DC)にて一旦停止後、自動的に次に向かう。


 多軸コントローラとして文字通り、アナログ入力8CH,アナログ出力8CH、エンコーダ入力16CH、DIO各16CH(32CH I/O拡張あり)は、必ずしもサーボループでの使用にこだわらないため、指令パターンジェネレータで生成した波形出力器として用いたり、温度圧力流量などのモニター入力を内部演算して各軸出力に反映させる用例もある。
[3]実際の応用事例
3−1 油圧XYテーブル
 当社が開発した油圧XYテーブル(写真3)は、1μの位置制御性を有し軸間の直線、円弧補間はもちろん、外力に対する
・ パワーアシスト
・ 位置/力切り替え制御
・ マスタースレーブ制御
・ ジョイスチック操作による軌跡の記憶(ティーチングリプレー)
等が簡単に実現できている。
 この油圧XYテーブルは図2のような構成でガリル社のモーションコントローラで油圧シリンダをデジタルサーボ制御を行った。

写真3

図2
3−2 地震体感装置
 また国内各地で、XYZシリンダを用いた地震体感装置(写真右)がこのシステムで数多く稼動中である。

3−3 パラレルメカニズム
 (財)機械振興協会技術研究所の五嶋裕之氏は、6軸パラレルメカニズムを用いた加工機、試験機の研究でこの度学位を取得されたが、この6軸の位置、速度、加速度、力のハイブリッド制御にガリル社のモーションコントローラも採用されている(写真5、図3)。
 このメカニズムをマシニングセンタのワークテーブル、パイプベンダ、材料試験機等に適用した場合の理論的解明が行われている。
また、この6軸パラレルメカニズムに対しては同構造の6軸ジョイスティックを用いてティーチングリプレイによる操作も実現されており、ガリルコントローラ上に6軸の連続データを記憶させることが出来る。

 当社においても、宇宙旅行体験館の6軸や、3軸、4軸のライドとよばれる体感遊具への実施例を有している。
その他、展示台としてモーターショウにおいて、自動車車両を搭載してパラレルメカニズムで様々な姿勢の展示を行う物や、上下旋回傾斜動作を行う物など、小さなコントローラが大きな展示物を動態展示している例は多数ある。

写真5 パラレルメカニズム駆動部

図3 パラレルリンク構成図
3−4 スピニングマシン
 スピニングマシンの様に、スピンドルはACインバーターモーター、加工押し当てローラは複数自由度を持った加工テーブルにセットされていて、モーター回転を加工点の周速一定に制御管理しながら、連係動作で加工操作を行うといった場合、姿勢だけでなく、加工側のゲインをオンフライで変化させることも出来る。

3−5 ホーニングマシン
 ホーニングマシンも、砥石の回転数、位置、速度、送り量、ドレッシング、エアマイクロ、負荷荷重、チャッキング、XYテーブル操作等多軸制御計測の特質が生かされる。
プレス機械にはもちろん、バルジ成形機の様にワークの変形に追尾するような用途にも有効である。

3−6 その他
 多軸制御の特性を生かして、一本のシリンダに大小2台のサーボ弁を設けて高速性と高精度の微小変位、荷重制御とを両立させた事例もある。

 また米国ガリル社ではガラスの曲面加工をする際に、荒削り用と精密研磨用のビットを分け、各々を連携させながらモータの回転数を制御するグラインダに採用実績がある(右図)。
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[4]今後の展開
 油圧機器のハイパワーデンシティ(機器サイズが小型の割りに大パワーが扱える)を生かした用途は決してなくなる事はない。

4−1 オートモーティブ分野
 オートモーティブの世界は電動化、ハイブリット化が時代の流れである。その中で自動車用油圧機器の需要はますます高まっている。パワステ、CVT、アクサス、ABS。ヨーロッパのメーカーでは走行パワートレインへのHST(ハイドローリックスタティックトランスミッション)の研究が根強く続いているという。
 小さく軽いアクチュエータで滑らかで力強い制御が可能なシステムとしての油圧機器は、設計から実車取り付け、走行テストに至るまでの各段階で、数え切れない項目のテストが要求される。このガリルコントローラは、その使い勝手の良さから、開発現場や生産現場での作動試験計測機の実験用手作り装置から生産設備まで幅広く使用することが出来る。

4−2 介護・福祉分野
 介護、福祉、シルバー関連では、いろいろな大学、民間研究機関が社会のニーズに応えるべく奮闘されている。
 利用者の多様な要望の中でも欠かせない技術的課題は安全、安心、快適、エコであり、これらを実現するキーテクノロジーは、スティフネスコントロールであろう。そのためには特に開発段階でのフレキシブルな対応の出来るコントローラが要望される。これに応えてゆける素材と自負している。
 これと関連して、ホームオートメーションが挙げられる。上記4つの課題をクリアして実現するためには太陽光、風力、現在はパワーソースとしては利用出来ない水道水力などを考えるが、その中でも特に風力を直接ハイドロパワーに変換することが重要である。そうすれば効率は飛躍的に改善される。エネルギーは位置として蓄えることとしマシン−マンインタフェースをガリルコントローラが担うこととなる。

 日本においてはPLC(シーケンサ)が高度に発達、利用されており、サーボループなどもPLCで問題なく使える事例も増えている。
その中でユーザーフレンドリーで、小型、軽量、ハイパフォーマンス・オールインワンのガリルコントローラの特質を更に生かしたアプリケーションを展開していきたい。
 本稿が今後、読者諸兄の頭の隅に引っかかり、何かの折にそう云えばとお役に立てれば幸いである。

 また、お忙しい折にも拘らず、ご対応頂いた機振協技術研の五嶋様には、衷心からの謝意を評させた頂きたい。


 <参考文献>
1) 2009 GALILMotion Control Product Catalog
2) (財)機械振興協会技術研究所パラレルメカニズム
 http://tri.jspmi.or.jp/research/abstract/parallel
3) 油空圧技術2006年7月号 油圧コントローラの新しい流れ
  (株)工苑 岩崎章、野見山紘一 

油空圧技術2010年4月号
 その他レポート

 過去、日本工業出版「油空圧技術」にもガリル・モーションコントローラと油圧制御に関するレポートを掲載しました。
 掲載した情報は次の通りです。

 
 (1) デジタルサーボコントローラによる油圧サーボシステムの構築<油圧サーボコントローラの新しい流れ> 2006年7月号

 また「油圧制御システムにデジタルサーボコントローラ」という特設サイトもご用意しております。ぜひ、ご覧ください。

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